店にドアがない話

9月、旧暦では長月。

「今の○月を旧暦で言うと?」って、中学生の頃に中間テストで出た。

だいたいみんな、6月くらいまでは覚えられるんだけど、7月くらいから怪しくなってくる。

ちなみに7月は文月、8月は葉月。文月と葉月は昔好きだった少女漫画に出てくる、主人公のお婆ちゃんとお母さんの名前。

それで、9月がどうしても覚えられない人のために、先生がこう教えてくれた。

「9月は英語でNovember」

「9月を境に、後の三ヶ月は語尾にemberがついて読み方が心持ち長くなる」

「だから長月!」

だから長月なのである。

 

そして、9月といえばお彼岸なのである。

実はお彼岸がとても待ち遠しかった。暑さ寒さも彼岸までなので。

 

今年の夏は本当に暑かったですね!叫び出したくなるくらい暑かった!

お店に来てくださったお客さんが気の毒になるくらい、当店はクーラーが効きません。

 

なぜか?

 

ドアがないから……。

 

開店当時からうちの店にはドアがない。

今もない。

クーラーも効かないし暖房も行き届かないので、夏は暑いし冬は寒い。

 

けれどもいいとこもあって、実は通りすがりの人からめっちゃ道を聞かれる。

「大江戸どこですか〜?」とか(※近所のとんかつ屋さん。おいしい)

「ロクマさんって何時からですか〜?」とか(※お隣の印刷屋さん。やさしい)

こうやって道を聞かれると、初めての人が声をかけやすいお店に出来てるんだなぁと嬉しくなる。

 

最近、京都市が「人にやさしい宣言」っていうのをやっていて

「あなたのお店の人に優しいポイントはどこですか?」とアンケートにあったので

入り口にドアがありません!」と書きました。

審査通った。

 

入り口にドアがないから、開閉時にウィルスに触れる心配がなくて安心、とか

ドアがないから換気がめちゃめちゃよくて、これはもう屋外と言っても過言ではない、とか

ドアがないからベビーカーや車椅子の人の苦労が一つ減る、とか

 

実はドアがないことのメリットって意外とある。

外から声をかけやすいっていうのも、その中の一つかな?って。

 

毎日外を走って登下校している子どもたちの様子も見てる。ドアがないから。

お散歩してるご近所さんの様子も毎日見かける。ドアがないから。

緊急車両が止まったらすぐ外出る。ドアがないから。

 

表は区切られた外の世界ではなくて、私が立ってるここから地続きの場所。

 

ドアがないコーヒー屋。

格好はつかないけど、やってる本人たちは結構嫌いじゃない。