UPSコーヒー(アップスコーヒー)について

西陣千本便り nishijin-letter

コーヒー豆の名前を読む午後

2022.07.23

コーヒーを毎日飲む。

幸いにして、常時50種類以上のコーヒー豆に囲まれているので、気分や気候によって毎回違うコーヒーを選んで飲む。

もちろん味見を兼ねている。……もちろん。

ちなみに今朝はグアテマラ・アンティグア。

グアテマラは中米にある国で、グアテマラのコーヒーの特徴は、すっきりとした爽やかな酸味である。

その中でもアンティグアと呼ばれる地方で採れたコーヒーは、その中にまったりとした甘さが漂う。

  • コーヒーの名称、基本は「生産国+生産地域」

書いていても厄介だなと思うのが、この「コーヒーの名前」というやつ。

各販売会社ごとに名前をつけてもいいのだけれど、たいていはちゃんと分かるように、適度なルールに則って決められていることが多い。

ストレートコーヒーは基本的に「栽培された国」や「地域」の名前で呼ぶ。

実はこれ、文字に起こすと厄介極まりない。

つまり

「グアテマラはグアテマラで栽培されたコーヒーで、グアテマラで採れたから『グアテマラ』と呼ぶ。その中でもアンティグア地方で栽培されたコーヒーを『アンティグア』と称する」

となって、「……なんて?」状態になる。

「グアテマラ」や「アンティグア」という固有名詞が、二つの意味を持って同じ場所に登場するから起こる混乱。

京都で採れた野菜のことを「地名+種類」で呼ぶのは理にかなっているんだな、と改めて思う。

例えば「壬生菜」とか「伏見唐辛子」あと「加茂ナス」

これが「壬生で採れた壬生」「伏見で育った伏見」「加茂で栽培された加茂」となると、いよいよ混迷を極める。

そうなればお野菜の文化も、コーヒーと同じ混乱の渦に巻き込まれたことだろう。

けれど、つまり「グアテマラ・アンティグア」というのは「京都・加茂」と同じ意味になる。

意味から辿ると混乱を招くコーヒーの名称だけれど、これが「栽培された国・地域」という意味だと理解すると

途端にコーヒーショップのメニューに書かれた難しい言葉が簡単に判別できるようになる。

  • スペシャリティには「農園名」や「木の種類」

ちなみに今は「エルサルバドル・ダンテ・ブルボン」を飲んでいる。

エルサルバドルも中米にある国で、中米で栽培されたコーヒーらしく、透明感のある綺麗な酸味と柔らかな口当たりが特徴。

その中でもダンテブルボンは、ふくよかで甘いボディが香る、飲みやすいコーヒーだと思う。

さて、じゃあ先ほどの名称の基本に当てはめて読解していく。

「エルサルバドル」はもちろん国。生産国を指している。

では「ダンテ」とは?

正解は、栽培している農園の名前。ダンテ農園。

普通にいけば生産地域となるが、先ほどが「地区」だったのに対して、今回はもっと小さな「農園」を指している。

「エルサルバドルのダンテ農園」

そして最後に、見慣れない言葉がひっついている。

ブルボン……?




 実際に使用しているPOP。細かく記載された情報を販売者なりに要約したものが「商品名」になる。

※POPは2022年7月現在のもので、販売しているものとは内容が異なることがあります。

さて、コーヒーの名前の付け方は始まりから終わりに向かって、指定地点がどんどん小さくなっていく。

国>地域>農園>…… といった順番で名前をつけていくのだ。

では農園よりも小さな点は何か?

実は「ブルボン」というのは、コーヒーノキの品種の一つである。

コーヒーノキにはブルボンの他にも、ティピカやカツーラなど様々な品種があって、やっぱり品種ごとに大まかな特徴がある。

つまり「エルサルバドル・ダンテブルボン」というのは

「エルサルバドルのダンテ農園で栽培されたブルボン種のコーヒー」という意味になる。

ちなみにこれは、生豆を仕入れた際に当店がシートを見てつけた名前なので

同じ生豆でも違う店によっては「エルサルバドル・ダンテ農園・フルウォッシュド」とか

(フルウォッシュドというのは精製方法。これはそのうち別の時に)

「エルサルバドル・ボルゴノーヴォ・ブルボン」とか

(ボルゴノーヴォは生産企業の名前)

「ダンテ農園・ブルボン・フルウォッシュド・21/22」とか

(21/22というのは収穫が2021年、乾燥させてから2022年に出荷ということ)

そういう名前をつけていることもあるけれど、大体こんな感じになると思う。

指定している事項がどんどん細かくなっていくイメージ。そんな感じ。

そのほかにも、精製方法や焙煎方法など、いろいろな要因が付随してくるけれど

これだけ知っていれば、最低限「豆の情報」は読み取れる。

  • ブレンドコーヒーの名前

さて、毎日コーヒーを飲んでいると意図せずヘビロテコーヒーが現れる。

みんなが気に入って、満場一致で美味しくて、美味しいコーヒーを淹れよう!となった時に筆頭に上がるコーヒー。

当店では「クリスタル20」がそれ。

柔らかな口当たり。穏やかで、それでいて香ばしく、飲み終わりはすっきりとした余韻が残る。

お気に入りのケーキを買ってきた時には、絶対にクリスタル20が用意されている。

クリスタル20はブレンドコーヒーなので、先ほどまでの「名づけのルール」には沿わない。

ブレンドコーヒーの名前は、ブレンドした人が思い入れを込めて付けるからだ。

クリスタル20の名前はというと、割と単純な話で

「キューバのクリスタルを20%混ぜて作ったブレンドだから」というものである。

ちなみに、ブレンドコーヒーの中でも

「モカブレンド」や「ブルーマウンテンブレンド」という名前をつけたければ

「モカ」や「ブルーマウンテン」を30%配合しないとダメというルールが存在する。

こういう、特定の種類のコーヒー豆の名前が頭についたブレンドコーヒーのことを、「冠ブレンド」と呼んだりする。

そういうルールさえ守れば、思い入れや願いを込めた名前をつけていいのがブレンドコーヒー。

どういう意味かな?と思ったら、お店の人に気軽に聞いてみるのも楽しいかもしれない。

当店で最も難解な名前はたぶん「カスピカブレンド」かな、と思っている。

カスピカ。スピカでも、カスピでもなく、カスピカ。

未だに意味はわからない。作った人だけが知っている謎の言葉である。

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